確か先週の水曜日だったかな。
私はひどく落ち込んでいた。
こうなるとソファで丸まったまま動けない。
時が過ぎるのを待つだけ。
でもこの日はふとあの子の顔が浮かんで、気付いたら電話をかけてた。
落ち込んでるときに人に話を聞いてもらうということをしない私がなぜそんな行動に出たのかは謎だけど、心の中の哀しいものを流させてもらった。
よし、今日は行ったことのない場所に行ってみよう。
電話を切ると気持ちが前向きになってた。
友達って本当にありがたい存在なんだな。
人は一人では生きていけないんだな。
うちから車で10分くらいの距離にこんな美しいお店があったなんて。
空間やそこに流れる空気、物たち全てが美しい。
腰をおろしてオーガニックのアールグレイを注文。
「砂時計が終わったら飲んでくださいね。」
さらさらと落ちる砂をぼんやり眺める。
窓からは美しい緑が見える。
もうこれだけで心がしゃんとするようなすーっとするような、清らかな心持ちになった。
こんなふうに丁寧に淹れてもらったお茶を飲みながら深く呼吸をする。
幸せだなあと感じながら。
ほっとしたらお腹が空いてきたのでトーストを注文。
美しいお皿に乗せられてやってきた厚切りトーストはバターが均一に染み込んでおり、どこを食べてもじゅわっと幸せな味。
ここのお店のはきっと何を食べても美味しいはずだ、とかぼちゃプリンも注文。
トーストで若干お腹がいっぱいになってしまった私を知っていてくれたかのように絶妙なタイミングでプリンを持ってきてくれた。
かぼちゃの自然な甘みを引き出すような砂糖の量と、それらをまとめるカラメルのほろ苦さ。
あゝなんて美味しいんだろ。
お腹も満たされたところで店内の本棚を覗いてみたらハッとした。
今の私が読むべき本があったもんだから。
いつまで待てばいいのか、待っていてもいいのか。
待つ苦しみの中にいる私の前に現れた本。
縋るような気持ちで手に取った。
「人との交信は時差をなくした。空間の隔たりというものをなくした。
電子の媒体が可能にしたそういう時差と距離のなさはしかし、近すぎることのもどかしさというものを恋人たちに押しつけているのかもしれない。
儘ならぬ時間を心に織り込むことなく、思いが募ればすぐに話しかけることでかえって交通が透明になりすぎ滑ってしまう。
煮詰まりゆく時間は、だから濃い時間というより耐え難い時間、息を止めてくぐり抜けるしかない時間といった方がいいかもしれない。
解放を待つ、終戦を待つ、刑期が明けるのを待つとか合否通知を待つというときの気分とほとんど同一の。」
本の中にあった上記の文章を思わず手帳に書き記した。
苦しみや悲しみの後には必ず新しい発見がある。
この数ヶ月の間にそんなことを実感している。
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