成長そして旅立ち

私の作業場にある窓から見える木に鳥が巣を作った。

今日は夏休みの自由研究さながら見守ってきた鳥の成長を綴ろうと思う。

開かずの網戸越しの写真なので少し不明瞭だけどご勘弁を。

鳥が巣を作ったよ。

子供に言われるまで気付かなかった。

聞けば数日前から一羽のヒヨドリがせっせと何かを運んで来ていたとのこと。

親鳥は私が見ている限りでは多くの時間を冒頭の写真のようにして過ごしている。

夜になるとこの窓のところの明かりを消し子供たちが大きな声で騒ぐと鳥がびっくりしちゃうでしょと静かにさせた。

このことを友人に話すと

「巣を作る前にここなら安全だとリサーチをしていたはずだよ。
子らのはしゃぐ声も夜に灯る明かりも含めてね。」

あゝそうか。
そうだよな。

お隣さんまでは遠くなく同居よりも近くない距離で私は親鳥を見守っていた。


親鳥が留守にしている間、巣の中を窓越しに覗いたら卵が3つ見えた。


赤ちゃんが産まれたよ!

仕事から帰ってきたら子供から嬉しい報告があった。

ぴいぴいと小さく高い声が聞こえる。

羽のないつるつるの皮、目はないけどくちばしだけが存在感を放っている赤ちゃん鳥。

雛が産まれるとお母さん鳥は忙しそうだ。

日に何度も雛に食事を運ぶ。

お母さん鳥は餌を見つけてくると巣の近くの木に一旦止まりピイと鳴く。

すると3羽の雛が一斉にピイピイ泣き出す。

一番大きな口を開けて一番大きな声で鳴く雛に餌を与える。

餌は蜂の日もあればとんぼのときもある。

そんなに大きいままで雛は食べられるんかな。

雛は体の半分ほどを占めるくちばしで昆虫を丸ごと含みまた吐き出してそれを親鳥が口に入れる。

忙しそうに餌を与える親鳥を見て

食べさせるっていうのは親の本能なんだよな。

と思った。

出産すると母乳が出てくるという神秘的なプログラムのように。

仕事から帰ってきてめちゃくちゃ疲れていてもお腹空いたという子供の声を聞くと座って休む気もなくなるという母なる不思議な力。



雛鳥の成長はとても早く1週間もするとふわふわした羽も生えて掌サイズの愛らしいぬいぐるみのようになった。

さらに数日すると羽を広げてばたばたし始める。

夜に大きな雷が鳴って大雨が降った。

鳥たち大丈夫かなぁ。

寝床で心配したけど鳥は今までこういう中で生活してきたんだもの。

人の一方的な感情で見ることではないな。



「ぴーちゃんが蛇に食べられちゃった…。」

泣きそうな顔で仕事から帰ってきた私に子供が言った。

いつもより騒がしくぴーぴー鳴いてるなと部屋の中から聞いていたそうでその時たまたま庭にいた爺が木に登っていく蛇の姿を発見し追い払ったけど時既に遅し。

雛がまだいることはわかっているからまた蛇はやってくるはず。

ここまで見守ってきたのに蛇に食べられてしまうなんて哀しいけどここに人が介入してはいけない気もした。

蛇だって餌を食べなければ死んでしまう。

自然の摂理を人間が操作するのは間違っているのか、弱い者を守ってあげる心を育む気持ちを尊重すべきなのか。

「悲しいことだけどこれが自然の摂理なんだ。
お母さんもすごく悲しいけどこの感情は人間の一方的な視点なんだよ。
自然の中で生きる動物たちは何百年もこういう歴史をつないできたんだよ。」

子供たちにはこう伝えた。



「ぴーちゃんがまた居なくなってる。」

朝起きぬけに鳥の様子を一番に見る娘が言った。

また蛇に食べられたのか。
それともまだ飛べないのに羽をばたばたさせているから巣から落ちてしまったのではないか。

外に出て木を見たら羽と肉がちぎれた雛が無残にも枝に引っかかっていた。

蛇だったら丸飲みしてったはず。

きっと巣から落ちたんだ。


鳥が大好きな娘は鳥図鑑を久しぶりに広げて

「お母さん、鳥がたくさん卵を産むのは小さいうちにたくさん死んじゃうからなんだってよ。」

と教えてくれた。

一羽残った雛が心配で仕方ないようで日に何度も巣を確認する娘。

ある日ぴーちゃんがいないと気付き庭に出てみたらうちの敷地の外にある用水路に落ちていたという。

救出して巣に戻したそうだ。

まだ上手く飛べないもんだから私も心配。

いつのまにかこの雛鳥の鳴き声を聞き分けられるようになっていた。

庭にある木から木に飛んでいたりする。

姿が見えないとひやりとするけど声が聞こえているから大丈夫。

声がだんだん高い方で聞こえるようになってくる。

そして聞こえなくなった。

巣だけがぽつんと残されたままで。


大人の自由研究は胸を痛めたり心を鬼にしたり心配したりとなかなか忙しいものとなった。

成長と旅立ち2020年夏のおはなし、でした。

nuï

ヌイの中身の人の箸にも棒にもかからない日記。 誰かに手紙を綴るように書く日もあります。

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